ダークカラーのカチッとした、「自分のスタイル」とか「自己主張」とかをはなから諦めているような、サラリーマンスーツを見ていると、カブトムシを思い出す。
大量生産で作られた、同じ型から出てきたみたいなリーマンが、だっだっ・・・と歩いているのを見ると、以前は恐怖感しか沸かなかった。 もともと、戦闘服・・・みたいな形が嫌いだったっていう理由もあるんだけど。
でも、ある人とつき合ってから、考えというか感じかたが変わった。
あの、無機質な無表情な、誰とでも同じような冷たいスーツの下には、あの、常に私よりもいくぶん体温が高い、だから、私が「熱い」という形容詞でもって呼びたくなるあの「肉体」があるんだなあ・・・。 と。
あの、すました、「仕事一筋です」と礼儀正しく話しかけているような、スーツの下には、私の動きによって堅くなったり、汁をしたたらせたり、体温を上げたりする「あの」肉体があるんだな・・・。 と。
そう思うと、あの「冷たい」スーツは、中にある「熱い」肉体を際だたせるための「前座」でしかないのか。
あの、優等生ぶったネクタイは、私が緩ます為にあるのか。
あの、ワイシャツのボタンの隙間は、私の舌を飲みこみ、中の熱さを確認させるためのものだったのか。
なるほど。
ステキなラッピングですね。
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