その17

 

種を育てる

 

 

 嫉妬の種は、誰かに植え付けられるもの。 種の主が知らない間に誰かに渡してしまうもの。 でも、その種をやすやすと心に植え込ませて、「ちょっと様子を見てみよう」なんて余裕をかますのは自分の責任。

 

 そして、小さな事柄にすら敏感に反応して、その「種」に栄養を与え、育て・・・。

 

 毎晩くる電話が今日は来ない。 もしかしたらあの例のコとデートしてるの? メールの返事がスグには来ない。 もう私と会うのがツマラナイの?

電話をしても繋がらない。 私のこと避けてるの? 会う予定が中々立てられない。 無理をしてまで会おうという情熱が無くなってしまったの?

 

 種は、栄養をドンドン吸収して根を張り、芽を出し、双葉を育て、本葉を生やしどんどんと枝分かれして育って行く。

 

 電話したいな。 声が聞きたいな・・・。 でも、他の人と一緒にいる時に電話してしまったら・・・コワイ。

 

 勝手に育てた「嫉妬の樹」に自分自身がからめ取られて行く。 楽な発想ができなくなっていく。 

 

 「男が信用できないって? そんな・・・俺のことも信用できないの? ひどいな。 信用してくれよ。 いや、むしろ信用シロ!」

 笑いながらアナタが言った言葉が頭の中かを行ったり来たり。

 誰のことも信用なんかできないよ。 

だって、私は心のなかにこんな「樹」を育ててしまうぐらいウカツな生き物なのだ。 その樹に支配されてしまうぐらい弱いのだ。 自分自身がシンヨウデキナイノダ。

 

 ロッキーホラーショーという映画を思い出す。 最初は、「鑑賞用」に可愛がっていた小さな「人食い植物」。 自分の血1滴で満足そうに育っていた植物が。 ある日、ドンドンと大きく育ち。 飼い主、支配者である主人公に「殺人」まで犯させてしまう。

 ミュージカルだったから、軽快に面白く作ってあったけれど。

あのロッキーホラーショーの樹が自分の中に育っているのじゃないか? と思う。 嫉妬。 

 

 そんな怪獣を心に育てているのに。 今日も私は、髪を梳かし、口紅を塗り、マスカラをほどこし、洋服をキチンと来て・・・外に出る。

「今日もとても元気です」

というようなラベルを自分に張りつけて。 いつか、そのラベルと自分自身が融合してしまうことを祈りつつ。

 

 本当の自分をさらけ出すのはとてもコワイ。

 

 

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