その3

 

Under The Name Of Men  



 あんなに好きだった歯並びが、ただの歯にしか見えない。

 あんなに好きだった耳の舌触りが、ただの耳にしか感じれない。

 あんなに好きだった彼の話が、私の心に届かない。

 そうなってしまった理由を私は多分、知っている。
魔法の言葉の逆、じゃないけど、たった一つの言葉。 それも全く、彼も気にしていなかったであろう「一言」が、私の気持ちに「妙な後味」を残し、それが時間がたつにつれて大きく育っていった。
 そして、いつの間にか、私の気持ちは醒めてしまった。

 たった「一言」だったはずなのに。

 私は、どうしても納得が行かなかった。
彼は、きっと未だに気付いてはいないんだろう。
 
 どうして私の気持ちが突然離れてしまったのか?
 私も説明はしなかった。 上手に話せる自信が無かったから。

その一言とは・・・

「そういうものだよ男ってやつは」

だった・・・

 たったそれだけ。 それだけの言葉・・・が、私の気持ちを干からびさせた。


 「男」という性別に逃げて欲しくは無かった。
「個人」「彼」として、その事柄について話して欲しかった。
「男だから」で責任逃れして欲しくはなかった。

「俺は、そういう性格なんだ」

だったら、受け入れていたんだろうか?・・・
多分、大丈夫。
 でも「男」という、人間の半分を占めている「性別」で自分の特別な思いを正当化して欲しくは無かった。

男である前に、あなたでいてほしかった

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