その5 |
||
|
戻らないで | |
俗に言う「立たない人」と付き合っていたことがある。
インポというタイプの人だ。 タイプ・・・というのは、私は、それを彼の「個性」として愛していた。
すごくエロスのある関係だったと思う。
セックスが始まると、泣いているような笑っているような、怒っているような顔をいつも彼はしていた。 私は、立たせるためにではなく、私がしたいから、色々と彼の体という楽器を演奏するように、いろいろなことをし掛けていた。 口を使ったり、手を使ったり、粘膜を使ったり、息を吹きかけたり、すったりはいたり。
彼はいつも大きな息を吐き出しながらも、怖がってるようだった。 また「立たない」という事実を自分で認めることを。 でも、私は、本当に彼とソウイウコトをするのが好きだった。 彼の困ったような顔や、ちょっと傷ついている顔は私をものすごく欲情させた。 彼の全てを吸い尽くしたい!!! と心から思った。 彼も私に色々としてくれた、やさしく、ゆっくりと、的確に。 その快感に身を委ねているのが大好きだった。 彼とのソウイウコトは、同じ時間なのに、なぜか、すごくユックリと、優雅に隠微に過ぎていっていた。
ある日、彼の「立たないはず」のものが、少しずつ力を持ち出す。 私は、平気な顔、嬉しい顔を装いながら、ショックを受けていた。 「お願い立たないで!」心の中で叫んでいた。
キチンと、その自信を取り戻したとき、彼は「普通の男」に戻っていった。
「私の愛している彼」は忽然と姿を消していた。 当たり前のように、激しく揺さぶられながら、自信に満ち溢れ、今まで感じ得なかった快楽に顔を歪ませている「彼」が、醜く見えた。
彼は、普通の男に戻り。 私は、彼を失った。
|
||
HOME | NEXT |