その43

 

贅沢なうたたね  

 

 

 体全体がだるい、重い。 節々がにぶく痛みを訴えている。

鏡を覗きこんでみると、荒れ果てた顔が映る。

 

 目の下のクマ。 腫れ気味で輪郭がアヤフヤになり充血気味の唇。ところどころ、まばらに赤く炎症を起している皮膚。

 

 なのに、幸せだ。

すべての荒廃は、あなたがココニイタという証。

 

 眠りたくない夜を過ごしたために刻まれたクマ。 お互いの唇を接吻で貪りあったためにのこった充血。 あなたの胸で眠りに落ちたために、あなたの汗で炎症を起した皮膚。

 

 鏡を覗きこみ、そっと指でその証たちをなぞりながら微笑む。

 

 普段は使われない関節を使ったために、残った疲労感を引きずりながら、もう1度ベッドに向かう。

 あなたがさっきまで、横になっていたその場所に、そっと体を横たえてみる。 あなたの残したまくらのくぼみにそっと、頭を乗せてみる。 あなたが、今朝、目を覚ましたときにどういう風景を見ていたのかが分る。

 だらしなく、でも優雅に足元にたぐまっている白いシーツを首まで持ち上げよう。 しっとりと、2人の体液を吸いこんで、重みを増したそのシーツにもう1度包まって、うたたねをしよう。

 

 もう1度、夢のような昨夜を夢に見られますようにと期待しながら

 

  

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