その73

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温度差

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 雨に濡れて歩いた。 2人で。

雨から逃げようと、寄り添った。 蒸発していく雨が体の熱を奪っていく。

寒い。

 

 濡れたあなたの肩が私の肩に触れる。 湿ったぬくもりが、じわじわと毛穴から忍び込んでくる。

 触れあう部分から、少しずつ、少しずつ。

 触れあうクチビルから、少しずつ、少しずつ。

 

 いつも、あなたの体温は私よりちょっとだけ高い。 お互いの触れ合う場所から、私は無意識にあなたの体温を盗み出す。 少しずつ、少しずつ。

 温度差が、よりあなたの存在をハッキリと私に知らせる。

 

 暖め合い、擦り合いおなじ温度になっていく、体。

温度差を感じなくなる頃には、雨に濡れていたことなど忘れている。 

そしてもっと大切なものに濡らされていく。

 

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