その24 |
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にほひ | |
私は鼻が利く。 これは父親ゆずりみたいだ。 色々な場所で色々な匂いを嗅いでいる。 好き嫌いを考える間もなく。
好きな人の匂い、好きだった人達の匂い、というのは必ず覚えている。 ただ、その「ストックされている場所」というのが脳味噌のどこら辺なのか?とてもフシギだ。 思い出そうとして思い出せるものでもなく、全然関係の無い時に思い出して、ビックリしてしまったりする。
高校生の時に付き合っていた男の子に、モノを渡す。 借りていたノートだったり海へ行った時に拾った貝殻だったり、作ってはみたものの失敗した弁当だったり、色々だけれど。 私は、必ず、自分の使っていたコロンを少ーしだけ付けて手渡していた。 何かにそう書いてあったのか? どうか? 今だと全然覚えていないのだけど、「お前、ませてるー!」と今の自分だったらツッコミを入れたい気分である(笑)。 いつも、思い出していて欲しかったんだと思う。 私が見えない場所にいても。
自分のお小遣いで買えるコロンだから「香水」と言われるようなモノではなく、雑貨屋さんで売っている千円程度のものを、自分なりに真剣に選んで頑なに同じ匂いを漂わせていた。 その男の子がある日言った「空耳ってあるけどさ、空鼻ってあんのかな? 俺、時々お前の匂い思い出すんだよ」。 ジンとした。 幼い言いまわしだけど、なんかとても欲情した。
異性でも、良い匂いをさせている人というのは、とても仲良くなりやすい。 でもフシギなのは、あー、良い匂いするなーこの人と思い「ね、何かつけてる?」と聞いても「え?何もつけてないよ」という人が結構いる。 体本来の匂い・・・なんだろうか?
男性が香水等を付けているのを嫌がる女性って中にはいるのだろうけど。 私の周りの女友達は皆「結構そそられる」と言う。 私も例外ではなく「自分の匂い」を持ってる人って好きだ。(もちつけ過ぎは厳禁)
ある人と別れて、もう、その人とは違う新しい恋人と街を歩いて、昔のことはあまり思い出さないような状態になっていたとしても。 すれ違う男性が前の彼氏と同じ香を漂わせていたりすると。 つい立ち止まってしまったりする。 「同じ匂いなのに、これじゃない」 となんだか理不尽な気持ちになるのだ。 多分、まったく同じ香りを付けているのだろうけど。 「似ているのに全く違う!!」と地団駄をダンダンと踏みたくなる。 その人本来の「オリジナル」な匂いと混じるから、特定の異性をソソルようになるのだと思う。
例えば、ある人はシャネルのアンテウスを付けていた。 彼はワインが大好きで一緒にいる時は、いつもワインを飲んでいた。 彼から匂っていたのは、アンテウスと葡萄の香りだった。 ある人は、インドネシアのガラムをいつも吸っていた。 そして、日本酒が好きだった。 キスして匂うのは、ガラムの甘い匂いと米の匂いだった。
「好きな人」という媒体を通して吸いこむ匂いはとても貴重品だ。
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