その26

 

INCQ  

 

 

 ICQを抹消した。

 2年間、そこにあったもの。

 なくてはならないものだと、少し前まで思っていた。

それは、「探したい人」がいたから。 I Seek You. ICQ.

 

 今、あなたの存在がドンドンと薄くなり、空気の中に吸い込まれていく。 「永遠」とか「一生」とか「愛してる」とか「お前がいなくちゃ」とか・・・あなたの口から生まれた言葉たち。

 その言葉たちはやるべきことを真っ当する前に、生きながら腐っていく。

 

 あなたの存在は、浄化されていくように、ただただ透明に無味無臭になっていくのに。 あなたの残した言葉だけが、ドンドンと膨れ上がっていく。 腐敗して、ガスを貯め、爆発寸前のように。

 

 その言葉の存在を忘れたくて、ICQを消した。

 

 フッと思う。

宇宙のようなネットの中で、私たちが残した会話は「破壊された衛星」のようにズッと漂いつづけるのだろうか?

 本気で信じたかった、あの言葉たちや、お互いの情欲にまみれたあの言葉たち、逢引の日時や、その感想は、いつまでも誰の目に触れることも無くずっと漂い続けるのだろうか?

 

 どちらにしても・・・もう、いいや。

私にはもう探すものなんか無い。

I never seek you.

INCQ

 

 

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