その27

 

自慰  

 

 彼が今、私の目の前で行っていること。 それは自慰行為。 自分を慰める行為。 ・・・か。

 でもそうは見えないな。

 薄く開かれた瞳はシッカリ私の目を見つめて潤んでいるし。 ときおり吐き出される甘そうなため息や、時々麻痺する筋肉や、そっと開かれた唇から漏れる私の名前は、すべて快楽の為に存在しているようだし。

 

 「なぐさめられている人」

というのは普通、もっとおとなしく、シュンと肩を落としているんじゃないんだろうか? こんなに、せつなそうな、苦しそうな、でも幸せそうな顔はしていないでしょう?

 

 私が今、眺めているのは、どちらかというと・・・自愛行為。

自分を愛しんでいる行為。

自分で、自分を愛している人。 そこから溢れ出した愛が私の唇を濡らしていく。 

 

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