その28

 

奪う?  

 

 

 人が人を奪うということがありえるんだろうか? 恋愛というみんなに平等な土壌の上で?

 「どうしたら俺のものになる?」 ある人は私の目を見て、ちょっと泣きながらそう言った。 私は変に冷静で「私はモノじゃない、だれにも所有されていないよ。」と答えた。

 その答えは彼の心には直接語りかけることは無かった。 彼は「私を所有したい」という欲望に支配されることで忙しかった。

 「俺はいままで、欲しいと思うものはどんな手を使ってでも手に入れてきた。」

彼は言う。

 「だったら、殺せば良い。 私は殺されても、多分、不幸じゃないと思う。ただ、問題は。 あなたが殺人者になったとして、私の体を手に入れたとして。 あなたが手に入れた瞬間に、私の精神はどこかに行ってる、絶対に手の届かないところだよね。」

 私は、殺されても良いと思った。 殺したいのだったら殺ればいい。 

 

 誰かを好きになって、恋愛をして、その人と一緒にいたいから一緒にいる。 全部、自分の意志が働いていること。 相手も同じだと思っていた。 その関係に「所属」とか「盗む」とか「奪われる」とか、あまり感じたことが無かった。

 でも人は、よく「略奪愛」とか、「夫を盗んだ」とか「彼女を奪われた」とか言う。

 

 本当にそうなんだろうか? 奪われるべきは「物」しか無いはず。 モノには意志がない。 だから奪われる。 自分の意志で行動できない無責任でも良い存在、たとえば赤ちゃんとか・・・そういうのは別にして。

 

 実は「奪われる」と思うのは、奪われる本人は楽なんじゃないんだろうか? 一切の意志、一切の責任から逃れられる。 1個のモノになって右に行ったり左に行ったりしていればいい。

 

 それに、相手を奪えるモノとして扱うもの、ちょっと失礼だ。

 

 色々な生き方がある、でも私はそういう生き方をしたくないだけ。 ね?T君分る?

 

 (ほとんど私信になってます・・・すんません)

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