その33

　私の上であなたの笑顔が揺れている。

　初めて抱き合ったときには気がつけなかった。　4度目の今日、気がついた。　あなたは微笑みながら私の上で揺れている。

　あぁ、この人は幸せそうだ。　人の幸せは回りに反射する。　きっと、私も幸せそうなんだろう。　

　でも、なんだかフシギな人だなぁ。　のめり込んでしまいそうだ。　あなたの笑顔を見ていると、心が痛い。　幸せなのに、ヒリヒリと心が痛い。　心が苦しい。

　体はあくまで対等に抱き合っているのに、私の心は甘く敗北を認めている様にせつなくて。　今、しっかりと繋がっているはずのあなたの体が、次の瞬間には無くなってしまうような泡沫のように感じて。　とっさに、首に回した両手に力が入る。　どこにも行かないで欲しいと思う。

　それでも、あなたは微笑んでいる。　当たり前のように、私の上で。

その笑顔に、心の奥を犯されているようだ、深く、深く。

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