その39

 

見えない保護膜  

 

 抱かれた後、いつもと同じ道を歩いて家に帰る。 いつもと同じ風景、同じ場所。 なのに、私の目に入ってくるのは「何かが違う」いつもの場所。 何かがちょっとだけずれているような感じ。

 同じ樹、同じ路側帯、同じ店。

 

 確か、あなたに会いに行くのに今朝歩いた全く同じ道を、逆方向に歩いているだけなのに。 違って見えるのは、私が皮膜を被っているせいなのだろうか?

 

 薄い皮膜、外からは全く見えない皮膜。 サランラップよりも精工に、私のことを残すところ無くそっくりと包み込んでいる皮膜。

 

 あなたの唾液、汗、そのほか色々の液体達。 あるものは私の粘膜に吸い取られ、あるものは皮膚の上に残り薄っすらと膜を作る。 確かに、シャワーは浴びたけれど。 その膜は暫く取れないような気がする。 

 

 少しの間、私はあなたを身にまとう。

 

 

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