その52 |
||
|
雨 | |
雨の日は理由になってくれる。 あなたと2人きり、部屋にベッドに閉じこもり、ただ目の前の体にだけ神経を注ぎ合う。 「だって、雨だしね」 このヒトコトで全てが許される。
静かに上から落ちてくる雨は、私達の部屋を孤立させる。 いつもよりも聞えない周りの雑踏。 いつもより親密度が増す部屋の中。 いま、ここに2人きり・・・という感じが濃度をまし、2人に絡みつく。
脳を使った言葉を一切発するのを止めて。 いっそのこと「ア行」の音だけを体の反応として搾り出し。 お互いを見つめよう。 雨は、いつもより私達と世間を遮ってくれる。 声たちは、行き場をうしない、しかたなく部屋の中でこだまする。
ベッドの中で私達は雲になる。 皮膚を隔てた外と中の温度差から、全身に水滴をつける。 お互いから湧き出した雨のような汗は、相手の体を伝わってベッドにシーツに降り注ぐ。 降り注いだ汗は、時間が経ち蒸発し、私たちの体にもう1度水滴を作る。 そうやって雨がリサイクルされるように、私たちの汗をリサイクルさせよう。 何度も何度も。 外に降る、本当の雨に見守られながら。
大丈夫、だれも責めたりしない。 だって雨なのだから。
|
||
HOME | NEXT |