その54

 

ひらく  

 

 あなたに出会って、私はまず、目を見開いた。 もっと見たいと渇望した。 そして、見るのに飽きたとき、口を開いた。 目に見えない何かを渇望した。 目に見えない何かの真実をなんとなく確認しあった後、私はちょっとだけ心を開いた。 あなたも同じように。

 

 開いた心はもう1度口を開かせる。

 でも、今度はお互いの口が接触したままで。

 開かれた口の中で、舌の交換が行われる。

洋服が少しずつ開かれていき、最後には足が開かれるだろう。

体液を交換するために。 快楽を交換するために。 愛を、または愛に近い何かを交換するために。

 

 人と出会うときに「ひらく」というのは1個のキーワードなんじゃないのだろうか?

 

 ひらく順番は、ケースバイケース、その時と場合によって違うし。 1度全部ひらかれた・・・と思っても。 まだ知らないことが隠してあり、もう1度開きなおしたり、行ったり来たり何度もするだろう。

 

 ある人は、途中の段階で、間違って財布を開いてしまい詐欺に会う事もあるだろう。

 

 ある人は、まず足を開く事から始めるのかもしれない。

 

順番なんかどうでも良い。 最後に「本当に自分が欲しいもの」がしっかり掴めていれば良いのだ。

 

 でも、本当に欲しいものが何なのか、分っている人は少ない。

 

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